vol.35

このページでは、日本各地に潜む物の怪を毎回1匹ずつピックアップ。オリヂナルイラストをつけて紹介してゆきます。




狐の七化け、狸の八化けと謂われるように、狸は化けるのが上手いとされる動物である。狐は一般的に女性に化ける事が多いとされ、狸は僧侶に化ける事が多い。狐がその妖力を使った化かす能力に長ける一方で、狸は対象そのものに化ける事に長けているようである。僧侶に化けた狸は寺に住み着き、説法をしたり、書を残したりもしている。居眠りをしてうっかり尻尾をだしたり、犬に襲いかかられて命を落とすまでは正体を見破られなかったと謂うから、なかなかの化け上手である。ひょっとすると狸自身化けている内に狸である事を忘れているのかもしれない。群馬県館林市の茂林寺には有名な分福茶釜がある。拝観料を払えば実物を観る事も可能だ。ひっそりとしたお寺の中、ガラスケースに収まった茶釜はいまだ沈黙を守っている。尻尾を出すチャンスを窺っているのか。はたまた己が狸であった事を忘れてしまったのか。