このページでは、日本各地に伝わる物の怪に纏わる物産を、物の怪観光が誇る物怪博物館コレクションの中から毎回一点づつ紹介してゆきます。




モマというのは九州地方で謂う魔物の総称である。闇に顰み怪しい声を出す梟もまたモマと呼ばれた。モマ笛と呼ばれる梟の形をした笛は幾つかあるが、福岡県の津屋崎人形のモマ笛は安永(1777年)の頃から作られている伝統ある民芸品である。もとは神社の授与品として作られていたが、その後郷土玩具として受け継がれ現在に至る。所謂鳩笛の一種だが、吹くと「ホ〜、ホ〜」と素朴な音色を出す。そのしらべは闇夜に響くモマの怪しい鳴き声を想像させる。吹き方によって音色が変わるので、よりモマに近い鳴き声を表現しようと、皆で競い合った事だろう。またこの笛は昔から老化による筋力低下の防止にも一役買っていると謂う。老人はこの笛を食事の際に吹き鳴らして食べると喉に食べ物が詰まらないのだそうだ。確かにこの笛を鳴らすには軌道をいっぱい広げて息を吐かなければならないので、リハビリグッズとしても画期的だ。リハビリなどというと、なんだかトレーニングっぽい感じもするが、この愛らしいモマ笛を「ホ〜、ホ〜」と鳴らしながらの食卓はなんだかとても楽しそうである。現在、津屋崎人形を制作している原田誠氏は初代・卯七から数えて七代目にあたる。安永時代から200年以上も続く伝統ある家系なのだそうだ。原田氏の手掛けるモマ笛は確かな筆致できちんと塗り分けられた丁寧な仕上がりが特徴である。注文して在庫がない場合、作品が届くまでに時間がかかる事もあるが、それも頷ける仕事ぶりである。氏はモマ笛だけではなく、大小1500種程の人形の古型も受け継いでいる。電話による注文も受けていて、送料分割高になってしまうが、少数からの注文も大丈夫との事。秋の夜長、モマになりきって、虫達と合唱なんて如何だろう。価格500円也。
問い合わせ先「筑前津屋崎人形巧房 原田誠」電話0940-52-0419まで。