このページでは、日本各地に伝わる物の怪に纏わる物産を、物の怪観光が誇る物怪博物館コレクションの中から毎回一点づつ紹介してゆきます。 |



長崎には三鬼凧と呼ばれる鬼の図案が描かれた奇怪な凧(長崎地方ではハタと呼ぶ)が伝わっている。平戸の「鬼洋蝶(おにようちょう)」、壱岐の「鬼凧(おんだこ)」、そして今回紹介する五島の「バラモン」である。いずれも鬼のような怪物が兜を被った武者に喰いついている図柄だ。海外から伝来したと謂われている長崎の凧に、何故そのような武者絵が描かれているのかはいまだ謎である。五島地方に伝わる「バラモン」は平戸の「鬼洋蝶」をさらに複雑な骨組みにした奇妙な形の凧で、後ろ姿の兜に大口を開けた鬼が噛みついた絵柄が描かれている。「バラモン」という言葉は「荒々しく向こう見ず」という意味の方言で、図柄は勇猛果敢な武者が、鬼に背中を向けず、真っ正面から立ち向かっている姿を表している。平戸の「鬼洋蝶」に描かれているのは、渡辺綱と羅生門の鬼であると謂われ、「表洋蝶(おもてようちょう)」と呼ばれる武者の顔が表向きに描かれた凧もある。壱岐の「鬼凧」も正面を向いた武者に後ろから鬼が噛みついた絵柄で、これは退治された鬼の首が百合若大臣に喰らい付いた所だそうだ。「バラモン」は「鬼洋蝶」では「裏洋蝶(うらようちょう)」に当たる兜を後ろから見た図案である。佐世保にある西安工芸ではこの凧を土鈴にした物を販売している。図柄自体難解なこの凧は、立体物にされ、さらにデフォルメされる事で、すっかりこれ自体独立した怪物の人形になっている。これはこれで大変面白いが、これが箱や説明書無しで骨董市等に出回れば、手にした人によって、まったく別の物の怪として扱われるかもしれない。物の怪は口碑伝承の世界だけでなく、ビジュアル面においても、こうして時代によって少しずつ姿を変えているのである。価格1500円也(郷土玩具展購入価格)。
<参考文献>「全国郷土玩具ガイド4」 畑野栄三著 「バラモン土鈴添付解説書」 「みんぱく発見4 アジアの凧」 塚田誠之編
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