このコーナーでは、毎回巷にあふれる様々な商品の中から、その存在自体不思議な物の怪テイストのアイテムをエッセイ風に紹介します。



額の御札は剥がさないように注意!

我が社が世界物怪観光であったならば、きっと物怪物産の方で取り上げていたであろうグッズを紹介しよう。2002年も終わりに近づいた11月。某デパートのホビーコーナーで玩具を物色していた時の事、怪しげな骸骨だの、意味不明のエジプト遺跡グッズだのに混じって懐かしい玩具が置いてあるのを発見した。両手を真っ直ぐに突きだした独特のポーズで、顔に黄色い御札を貼られた人形。そう、あのキョンシーではないか!ハリウッドのSFXクリーチャー全盛の1985年、カンフーアクションとホラーの融合した不思議な香港映画「霊幻道士」が大ブームとなる。ハリウッドにはとても及ばないチープな特殊メイクだったが、生身の人間が演じる動く死体の怖さはかえって新鮮だった。「中国ではかつて異郷の地で亡くなった人の遺体を故郷に送り届ける為に死体を蘇らせ動かす技術があった。」荒唐無稽に思われる事柄も広大な大陸ではあり得る事実なのかもしれない。キョンシーはその摩訶不思議な怖さとユーモラスな動き、物語の面白さで日本でも大ヒット。続編や類似作が次々と作られた。しかし、あれだけブームになったにも拘わらず、キョンシーグッズとしてはキャラクター化されたぬいぐるみを見かけるくらいで、これといった商品にはお目にかかれなかった。あれから10数年、キョンシー映画も殆ど見かけなくなった今になって、こんなスタンダードなグッズに出逢うとは予想もしていなかった。殆どのパーツがチープなプラスチックで出来ているが、ディテールはなかなか凝っていて、胸の模様や額の御札はステッカーで細かく再現されている。顔と手は肌色の別パーツで、帽子の上にはモールで出来た飾りが付けられている。特筆すべきはその動きで、ゼンマイを回せばピョンピョンと劇中さながらのアクションを見せてくれる。メーカー名及び生産国の表示は見あたらないが、以前中国のお土産で貰ったゼンマイ人形と作りが似ている。この今までありそうでなかった愛らしい動きに思わず手を叩いて喜びたい衝動を抑えつつ、店頭に並んでいた2体両方を購入した。価格は一体680円。この出会いはかつて練馬区にて「とびだし注意!」と書かれたキョンシーのイラスト付き看板を発見して以来の感動であった。