水辺に現れる怪で、河童と並んでポピュラーなのが川獺です。関東はもとより、四国や青森など、比較的広い範囲で伝承が残ります。河童のような特性と、狐など化ける動物の特性を併せ持った、水辺のトリックスターです。動物が物の怪に、あるいは物の怪が動物に、物の怪特有の進化の過程がわかる非常に興味深い物の怪の一つです。さて、その川獺、江戸城のお堀端、虎ノ門付近に出没しました。雨の夜、ある武士が、傘もささず着物の裾を引きずって歩く子供に出遇います。夜、子供が一人で歩いているだけでもおかしいですが、雨に濡れながら歩いているのは益々おかしい。現代なら、それでも知らぬふりをする人も多いかもしれませんが、当時は違います。不審に思ったその武士は「尻を端折りなさい。」と声をかけました。ところがその子供は聞こえないのか素知らぬ顔。そこで後ろから着物の裾を捲った処、その子供のお尻がピカッと光ったそうです。この川獺、他にもさしている傘に乗っかってきたりとなかなかの悪戯好きです。川獺は狐や狸と同様、化けるのが得意と謂われ、地方によっては子供や美女に化けて現れます。また時には生首に化けて、漁師の網にかかると謂いますから悪戯が過ぎますね。



お化け屋敷の看板や昔話のお化けつづらの場面で、お化け代表として必ずといってよい程登場するのが、この轆轤首でしょう。ヒュ〜ドロドロ〜の効果音と共に長〜く首が伸びる姿は、日本人の多くが認める、お化けの典型的な姿の一つでしょう。この轆轤首、その名の通り轆轤でひねり出した粘土のように首が自在に伸びるタイプと、首が体から抜けて飛び回るタイプがあります。後者は飛頭蛮とも書かれ、中国から渡って来た物と思われます。また看板や昔話のワンシーンにあるように、轆轤首がその首を自らグングン伸ばして人を驚かすというより、実際は本人の意思とは関係なく寝ている間等、無意識の間に首が伸びてしまう、一種の病のように捉えられる事も多かった様です。ここ新吉原にも、首が伸びる奇病ともいえる特性をもった芸妓がいました。夜半過ぎ、彼女が寝入った処、首が枕を離れること一尺(やく30センチ)程垂れたのを、さる俳諧師が目撃しました。この芸妓、普段は絶世の美女であったと伝えられています。スルスルと数メートルも伸びるのではなく、本人も気付かない内に、タランと数10センチ垂れるという処が、なんだか妙になまめかしい感じがします。さて、実際の処はどうだったのでしょう?