雪女ほどメジャーではありませんが、氷柱女という冬の怪もいます。つららは雪に比べて、より寒い地方でしかお目にかかれない自然現象なので、この怪の分布も自ずと寒い地方に限られるようです。イメージとしては雪女に近いようですが、氷柱という特性を生かした恐ろしい技も兼ね備えているようです。





昔、秋田に現れたという怪。吹雪の夜、とある夫婦の家を色白の若い娘が訪れ、一夜の宿を乞うので、快く泊めた処、翌日になっても翌々日になっても吹雪がおさまりません。ある夜夫婦は娘に風呂を薦めましたが、なぜか入りたがりません。それでもと夫婦に薦められて、娘はやむなく風呂に入りましたが、今度は入ったっきりなかなか出てきません。夫婦が心配に思って覗いてみると娘の姿は無く、湯船に彼女が挿していた櫛だけが浮いていたそうです。 また別の話では、氷柱女の壮絶な能力が発揮されています。ある男が何処からやってきた色白の美しい娘と恋仲になり結婚しました。ところが春が来ると共に娘は忽然と姿を消し、いくら探しても見あたりません。諦めた男は別の娘を嫁に貰い、暮らし始めます。ところが冬になると、春にいなくなった娘がひょっこり帰ってきます。自分を置いて結婚した事を責め立てるので、「お前が春になって勝手に姿をくらましたからだ。もう帰ってこなくてよい。」と言った処、娘は突然氷柱に変身し、男を刺し殺してしまったそうです。(岩井宏實『暮しの中の妖怪たち』より)



同じような話は青森県にも伝わっています。ある男が「シガマのように白くて細い女房がほしいものだ。」と呟いた処、その通りの女房がやって来ました。この女房、美人でよく働くとても良いお嫁さんでしたが、どうした事かお風呂に入りたがりません。気になって仕方がない男は、隣の婆さまに頼んで無理矢理風呂に入れて貰います。様子を伺っていた男が風呂に行ってみると、女房の姿は消え、湯船には櫛が浮いているばかりだったそうです。